このシリーズでは、軽度知的障害や発達障害がある生徒を対象とした自立活動について、A特別支援学校の取り組みを軸に紹介していきます。
※本記事の作成に当たり、A特別支援学校からの許可をいただいています。
今回は「自立活動の授業づくり」として、主に「指導略案」「授業展開の工夫」「年間指導計画」「授業づくりのスケジュール」について紹介します。
指導略案
A特別支援学校の自立活動で重視している生徒一人一人の【本時の目標】から記入し、【生徒の様子】【評価の欄】が設定されています。
また、展開では、自立活動の6区分27項目を先生が意識できるように、それぞれの学習活動の横の欄に【区分】を記入するようにしています。
生徒の達成状況をどのように評価するかを確認できるように、【配慮事項】に【評価のポイント】があります。
略案は毎時間作成し、データとして蓄積されています。
詳細に書き込むことよりも、コンパクトな情報を多く積み重ねていくことを優先にされています💡
自己評価シート
毎時間の授業の最後の10分程度で生徒自身が自己評価シート(A5)の記入を行います。
評価項目には授業で取り組んだ学習内容を記入し、1~5段階の中であてはまるものに〇をつける形式です。また、感想・意見を記入できる欄もあります。
授業展開の工夫
自立活動は自分の苦手さや困難さにアプローチしていく学習です。そこで、少しでもリラックスして楽しく学習に取り組めるように、自立活動の授業そのものに嫌悪感を抱かないように、授業の導入としてアイスブレイクを設定しています。
アイスブレイクの内容としては、ゲーム的なものをはじめとして気持ちのチェックやフリートークなど工夫されています。
加えて、「自立活動は個から始まる」という前提を踏まえ、その時間の目標を生徒一人一人に提示し、確認する時間があります。
また、単に知識・技能を教えるだけでなく、生徒自身が活動を通して、考えたり、気づいたり、自己を振り返ったりすることができるよう、アクティブラーニングの視点から授業を考えています。その際、生徒の考えや意見を否定したり、行動を遮ったりすることを極力避け、生徒にとって成功体験となるよう学校全体で共通理解を図っています。
さらに、前述した自己評価シートの記入時間も授業のまとめとして行うなど、「アイスブレイク」→「主たる学習活動」→「自己評価シート」と授業の流れを全学年で統一することにより、教師の不安や負担の軽減も意図されています。
アイスブレイクによる気分の高揚は自己効力感や意欲に影響します。
その上で目標を共有することは効果的だと考えられます💡
年間指導計画
自立活動はそれぞれの生徒にオーダーメイドで行うものですが、大まかな内容や流れを把握するために必要な年間指導計画を作成しています。
生徒の状況や学習進度などを踏まえて修正・変更が可能なように、柔軟に対応できる計画となっています。
4月のオリエンテーションから始まる自立活動の授業です!
“これから始まるプロジェクト”という感じがします💡
授業づくりのスケジュール
年間指導計画とは別に、生徒の学習内容に職員の業務、自立活動検討小委員会の内容を付け加えた自立活動スケジュールがあります。
どの時期に何をしなければならないのかが一目で分かるようになっています。
障害の状態や進路、卒業生の状況等を考慮したカリキュラムマネジメントの視点があります。スケジュールの中に個別の支援計画、個別の指導計、個別の移行支援計画の作成もあり、長期目線・一貫性を持った計画ができるようになっています。
自立活動アドバイザー
教職員の自立活動に対する不安解消と全職員で自立活動の授業にあたることを目的として、専門性の高い教師を各学年のアドバイザーとして配置しています。
X年度は以下のような体制でした。
学年 | アドバイザー |
1学年4クラス | 1学年主任、巡回相談担当 |
2学年4グループ | 2学年主任、相談支援部長 |
3学年4グループ | 3学年主任、教務主任、研究部長 |
先生方の専門性向上に向けた体制の工夫です💡
この取り組みの先に、小学校・中学校・高等学校での指導の充実を見込んでいます。
次回「自立活動の授業の実際-オリエンテーション-」
次回の記事は「自立活動の授業の実際」について紹介していきます。
学習指導略案と実際に使用したスライドを共有していきます🍀
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