生成AIを活用したツール作りへ
ブログホーム最上段の流れるテロップにもあるように、本吉研究室では最新のデジタルサービスを特別支援教育に応用するための研究を行っています。
2023年5月より自立活動のアセスメントツールや、使いやすい諸指導計画のシートを考案したり、Googleworkspaceを活用した公務のDX化などの提案を行ってきました。
ツールの開発は、主にエクセル、スプレッドシートを使っていました。2024年8月ごろから、アセスメントで使う自立活動の区分項目に係る児童生徒の課題を生成AIで試行的に書き出させたことで、生成AI活用の有効性を実感することができました。それが今後の研究の大きなターニングポイントとなりました。
特別支援教育はニッチなニーズの高い分野であり、生成AIを活用することに関しては潜在的な需要が高いと思います。有効に機能すればとてつもない業務の効率化が図れるのでは?と感じるようになりました。
生成AIを使ったツールを開発するに当たっては、まず大きな壁となったのは、生成AIにどのように入力すれば意図通りの答えを生成してくれるかでした。巷の最新情報からさまざまなパターンのプロンプト(命令文)を使いながら試行錯誤を繰り返すことで、徐々に意図通りの答えを提案してくれるようになりました。最終的には対話形式で動作するプロンプト形式が、不慣れな人でも確実に知りたい情報にたどり着けるという結論に至りました。
プロンプト(命令文)について
「俺が使うと生成AIはうまく答えを返してくれない」ということを、知人や学生から聞きます。
生成AIを使うことに慣れていない人や、うまく情報が生成できない人が陥りやすい点について、チャットGPTに聞いてみました。
AI生成ツールを使う際に初心者がプロンプトの入力で間違いやすい点を以下に箇条書きでまとめます。
- 曖昧な表現:
- 「面白い文章を生成して」といった具体性に欠ける指示。
- 具体的な情報の不足:
- 「猫について書いて」とだけ書くと、どのような内容の猫に関する文章を生成するのかが不明確。
- 過剰な情報:
- 一度に多くの情報を詰め込みすぎて、AIがどの情報を優先すべきかが不明確になる。
- 文法やスペルのミス:
- 誤字脱字があると、AIが意図を正確に理解できないことがある。
- 否定形の使用:
- 「面白くない文章を書かないで」という否定的な表現は、AIにとって理解しづらい。
- 目的の不明確さ:
- 「ブログのために何か書いて」といった、具体的な用途がわからない指示。
- 文脈の不足:
- 前後の文脈を提供しないと、AIが適切な文章を生成するのが難しい場合がある。
- 期待するフォーマットを伝えない:
- 「リスト形式で書いて」といった具体的なフォーマットの指示がない。
- 更新情報や文脈の提供不足:
- 特定のトピックや最新の情報に基づいた内容を期待する場合、その情報を提供しない。
- トーンやスタイルの指定不足:
- 「カジュアルなトーンで」といったトーンやスタイルの指定がないと、期待と異なる文章になることがある。
これらのポイントを意識してプロンプトを入力すると、AIがより適切で満足度の高い出力を生成する手助けになります。
このように、生成AIを使うには、入力するときのルールがあります。慣れれば効果的なアドバイスしてくれます。
では、慣れてきたらそれでいいかというと、また新たな問題に直面します。
ざいちゃん的には公務で生成AIを使った場合は、作業内容によっては毎回同じプロンプトを入力する必要があり面倒くさいです。
※事前に効果的なプロンプトをたくさん作っておいて、データベース化しておくのもいい方法ではありますが・・・
例)学習計画について尋ねる場合のプロンプト
{中学部}の{軽度の知的障害}の生徒、{国語}の{書くこと}について、{課題}という観点から学習計画のアイディアを提示してください。
という具合に{ }の部分を毎回打ち直してから生成AIに聞くことになるのであまり効率的ではありません。
ところがAIチャットボットは、課題や作成したい計画、データベースからの抽出など、使う目的がはっきりとしている場合、それに特化したプロンプトを事前にプログラムしておけば、対話形式で提案してくれて、その内容に沿って情報を入力していけば、意図通りの情報にたどり着くことができます。現場で使うとしたら、こちらのほうが使いやすいと思います。
このようにとても便利なAIチャットボットですが、現場でオーダーメイドのAIチャットボットを作成するには、ちょっとだけ専門的な知識が必要となります。
教育現場において公務支援・DX化の観点から見た生成AIとAIチャットボットの活用方法と違い
では、もう少し生成AIとチャットボットについて深堀りしてみましょう。
生成AI(チャットGPT、ジェミニなど)使っていれば、GPTsのようなAIチャットボットは必要ないんじゃないの?という素朴な疑問が起こると思います。前述したよう仕事の効率化を考えた場合チャットボットのような仕様のAIが便利な場面が多くあります。そこで、ジェミニくんに違いを聞いていました。(以下はGeminiPro1.5で生成しました)
生成AIとAIチャットボットはどちらも教育現場のDX化を促進する強力なツールですが、その特徴や活用方法は異なります。
1. 生成AI
特徴:
- テキスト、画像、音声、動画などのコンテンツを自動生成する。
- 膨大なデータから学習し、オリジナルコンテンツを作成する。
- 教育内容の個別化、教材作成の効率化、学習の可視化に役立つ。
活用方法:
- 教材作成: 教科書、ワークシート、テスト問題などの教材を自動生成。
- 個別学習: 生徒の学習進捗や理解度に合わせて学習内容をパーソナライズ。
- 評価・フィードバック: 生徒の課題やレポートに対して自動で評価やフィードバックを提供。
- 学習データ分析: 学習データから生徒の理解度や学習傾向を分析し、教育効果の向上に役立てる。
公務支援における活用例:
- 授業計画作成: 教科書や学習指導要領に基づいて、授業計画を自動生成。
- 教材共有: 生成AIで作成した教材を他の教員と共有。
- 業務効率化: 報告書作成や資料作成などの事務作業を効率化。
2. AIチャットボット
特徴:
- 対話型のAIで、自然言語で質問や指示を受け付ける。
- 学習した知識に基づいて回答や情報を提供する。
- 生徒の質問対応、学習支援、情報提供などに役立つ。
活用方法:
- 学習支援: 生徒の質問にリアルタイムで回答したり、学習内容に関する情報を提供したりする。
- 進路相談: 進路に関する質問に回答したり、進路選択に関する情報を提供したりする。
- 事務処理: 授業の予約、教材の注文、成績照会などの事務処理を自動化する。
公務支援における活用例:
- 生徒対応: 生徒からの質問や相談に自動で対応。
- 情報提供: 授業スケジュール、学校行事情報、連絡事項などの情報を提供。
- 事務処理: 教員向けに、教材注文や成績入力などの事務処理を支援。
生成AIとAIチャットボットの違い
特性 | 生成AI | AIチャットボット |
機能 | コンテンツ生成 | 対話型情報提供 |
活用方法 | 教材作成、個別学習、評価、分析 | 学習支援、情報提供、事務処理 |
強み | 効率的なコンテンツ作成、個別化された学習 | リアルタイムな対応、24時間対応 |
弱み | データの偏りによる偏ったコンテンツ生成 | 知識の範囲内での回答 |
ちがいまとめ
生成AIとAIチャットボットはそれぞれ異なる強みを持つため、教育現場では両者を組み合わせることで、より効果的な公務支援とDX化を実現できます。生成AIは教材作成や個別学習を支援し、AIチャットボットは生徒の質問対応や情報提供の効率化、教員の負担軽減と教育効果の向上に貢献します。
調べものや個別学習には生成AI、繰り返しが多い仕事や、目的がはっきりした業務にはチャットボットがいいようですね!
本吉研究室で考案したプロンプトと、それを活用したチャットボットについて
本吉研究室では、いままでさまざまなAIチャットボットをDifyで公開してきました。Difyで公開することのメリットは、ブラウザ上でのAIチャットボットであるため多くの人に活用してもらえることです。また、入力した人のログが管理できることで研究の参考にできることが挙げられます。
しかし、Difyサーバーの運用費や、使用しているLLM(生成AI )やAPIキーの使用料などが発生しますので、閲覧者が増えれば増えるほど経費がかかってくるということがデメリットといえます。安い研究費で賄うには不安材料といえます。
本吉研究室では、ニーズに応じたチャットボットの開発を行っています。現在は保護機能で公開しており、一部の方に使用していただいていて、ご意見をうかがっているところです。
さらに!
生成AIブームの火付け役、チャットGPTのサービスがバージョンアップして、無料で使える機能が増えました。それがGPTsの無料化です。
GPTsは、チャットGPTのオプションの一つです。簡単に言えば自分でAIチャットボットなどのアプリケーションをつくったり、公開したりすることができる機能です。今までは、有料のチャットGPTでしか使えませんでしたが、無料バージョンでは、公開されたGPTsを利用できるようになったんです!
研究室では、Dify同様GPTsを使っての公開も考えています。経費は低価格で抑えられるところがメリットとなります。ただし使用者はチャットGPTに自分のアカウントでログインする必要があります。
学校現場での使用を考えると、自分が仕事で使っているパソコンから、自治体から与えられたアカウントでチャットGPTにログインすることになると思いますので、使用の際には何らかの規定があるかもしれません。同様に私用のアカウントを現場で使えるのか?です。自宅で使うには最適です。
今後のとりくみ(生成AIを使ったデータ分析)
生成AIを活用した今後の取り組みとして2点を視野に入れています。
1 ニースに応じたチャットボットの作成
現場のニーズの掘り起こしと、オーダーメイドのチャットボット作成を目指します。
2 生成AIを使ったデータ分析
研究データの取り方や分析方法に、どのようにAIを活用できるか研究します。
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