
はじめに
近年、生成AI(LLM: Large Language Model)は教育現場でも活用が進んでいます。しかし、多くのAIはインターネット経由で利用する必要があり、セキュリティやプライバシーの問題が懸念されます。特に、学校内の閉じたネットワーク(イントラネット)で生成AIを動かしたいというニーズは高まっています。
そこで、今回は「LM Studio」というツールを活用し、インターネット接続なしで校内のネットワーク内にLLM(大規模言語モデル)をセットアップし、使えるかどうか試してみました。
LM Studioとは?
LM Studioは、ローカルPC上で大規模言語モデル(LLM)を実行できるGUIツールです。
- オフライン環境で動作可能
- Hugging Face などのモデルをダウンロードし、ローカルで動作
- シンプルなUIで初心者でも扱いやすい
- ローカルAPIとしても利用可能(他のアプリからの連携が可能)
今回の検証では、Googleの「Gemma 3-12b-it」モデルをLM Studioで動作させました。
検証環境
今回の検証は、以下の環境で行いました。
- ハードウェア
- MacBook Pro (Apple M1)
- RAM: 16GB
- SSD: 512GB
- ソフトウェア
- LM Studio(最新バージョン)
- Hugging Faceからダウンロードした「Gemma 3-12b-it」モデル
- ネットワーク環境
- 家庭のネットワーク
インストールとセットアップ手順
① LM Studioのインストール
LM Studioは、以下の手順で簡単にインストールできます。
- LM Studio公式サイトからMac用のインストーラーをダウンロード
- ダウンロードした
LM Studio.dmg
を開き、アプリケーションフォルダへドラッグ&ドロップ - インストール完了後、LM Studioを起動
② モデルのダウンロードと設定
次に、ローカル環境で使用するLLMをダウンロードします。
- LM Studioを起動し、「モデルの検索」タブを開く
- Hugging Faceから「Gemma 3-12b-it」を選択。※これは、GoogleのLLMでGeminiみたいなものです。他にもたくさん登録されています。下図参照
- ダウンロードボタンをクリックし、ローカルPCにモデルを保存
- ダウンロード後、「モデルをロード」して準備完了

③ 校内ネットワークでの利用設定
今回の目的は、校内ネットワーク内で生成AIを利用することです。そのため、LM StudioのローカルAPI機能を活用しました。※自宅で校内ネットワークを仮想して行いました。
- LM Studioの「開発者モード」を有効化
- ステータスが「Running」になっていることを確認
http://localhost:PORT/v1/chat/completions
のエンドポイントが利用可能に- 校内ネットワーク(家庭内)上の他のPCからAPIリクエストを送信(LAN内アクセス)
実際に使ってみた
セットアップ後、ローカル内(MacBook Pro)で、LM Studioのチャット機能を試してみました。

- 質問: 「特別支援教育の学習指導要領について教えてください。」
- AIの回答: Assistant「gemma-3-12b-it」
特別支援学校の学習指導要領は、文部科学省が定める「学習指導要領」を基本としつつ、特別支援教育に特化した内容が盛り込まれています。通常の学習指導要領と共通する部分もありますが、個々の児童生徒のニーズに応じた柔軟な対応が重視されています。 以下に、主要なポイントをまとめます。 **1. 学習指導要領の構成** * **特別支援教育のための基准編:** 特別支援教育の理念や目標、関係機関との連携など、特別支援教育全体に関する基本的な考え方を定めます。 * **各障害類型別の学習指導要領:** 知的障害、肢体不自由、視覚障害、聴覚障害、発達障害などの障害類型ごとに、具体的な内容を定めます。 * **教科・科目別学習指導要領:** 各教科・科目の目標や内容の構成、評価方法などを定めます。 **2. 特徴的なポイント** * **個別のニーズへの対応:** 児童生徒一人ひとりの特性や発達段階に応じて、目標設定や学習計画を立てることが重要です。 * **プロセス中心の評価:** 結果だけでなく、学習過程における努力や成長を重視した評価を行います。 * **多角的な視点からの指導:** 専門的な知識を持つ教員だけでなく、保護者や関係機関との連携を通じて、包括的な支援体制を構築します。 * **社会参加に向けた教育:** 将来の自立と社会参加を目指し、生活技能やコミュニケーション能力の育成に重点を置きます。 **3. 各障害類型別の学習指導要領における主な内容** * **知的障害:** 基礎的な知識・技能の習得に加え、日常生活に必要なスキルや社会性を身につけることを重視します。 * **肢体不自由:** 身体機能に合わせた学習環境を整備し、運動能力の発達やコミュニケーション能力の向上を図ります。 * **視覚障害:** 特殊な教材(点字、拡大文字など)を用いて、知識・技能の習得を支援します。 * **聴覚障害:** 手話や音声言語によるコミュニケーション能力の育成に重点を置きます。 * **発達障害:** 個々の特性に応じた学習方法や環境を提供し、自己肯定感を高めながら社会性を身につけることを目指します。 **4. 最新の情報源** 文部科学省のウェブサイトで最新の学習指導要領を確認できます。 * **特別支援教育のための基准編:** https://www.mext.go.jp/content/20230518-mxt_tokushu01-000029476_01.pdf(https://www.mext.go.jp/content/20230518-mxt_tokushu01-000029476_01.pdf) * **各障害類型別の学習指導要領:**(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/koushin/index.htm) より具体的な情報が必要な場合は、どの障害類型について知りたいか、あるいはどのような内容に興味があるかを教えていただけると、さらに詳しく説明できます。教員免許更新制(アーカイブ):文部科学省
レスポンス速度はインターネットで使うGemini2.0やChatGPTと比較すれば遅かったです。生成内容はやや甘いような気がしましたが、上記のように生成してくれました。(なぜか教員免許についてのサイトを紹介してくれました?、ネット情報などについては弱いようですね。)
ネットワーク内の他PCで、ブラウザからチャットできるか試してみました。
次に、校内ネットワーク内の他のPCからブラウザを使ってアクセスして見ました。ところが・・・

このようにエラーが出てしましました。調べてみると以下のようなことがわかりました。
「ブラウザは ファイアウォールの設定によってブロックされる可能性 があります。」つまりブラウザ自体の設定でポートの解放が必要であるとのことでした。これでは、ローカルで使う度に切り替える必要があるので、ブラウザでの使用は実用的ではありません。
※Difyの活用についても調べました。 Difyはサーバーサイドの通信なので、LAN 内のポートにアクセスできるので、MLstudioにAPI接続できるということです。
以上のことから、ブラウザで直接チャットするのではなく、Difyを使えば校内のネットワークを介してLLMを利用できるということが確認できました。
使ってみた感想
メリット
✅ ローカルのDifyと組み合わせればインターネット不要で、校内の閉じたネットワーク内だけで生成AIが利用できる
✅ LM StudioのUIが分かりやすい。 個人差あり?
✅ オフラインでも十分実用的だといえる。(今回使ったLLMは、Gemma 3-12b-it)
✅ ローカル内で運用できるので外部にデータが流出する可能性が激減する
課題・注意点
⚠ レスポンスは遅く待てない人がいるかもしれません(笑)、
⚠ 初回のモデルダウンロード時にはインターネット接続が必要
⚠ メモリやストレージの容量に注意(大規模モデルは10GB以上の容量を使用)
⚠ オフラインのLLMなので、最新の情報から生成するのは難しい
まとめ
今回の検証では、LM Studioを活用することで、校内ネットワーク内でLLMを実行し、生成AIを活用できることが確認できました。
特に、
- インターネット接続なしでも動作する
- 教師や生徒が校内環境で安全にAIを利用できる
- Difyなどのカスタムアプリとの連携が可能
といった点は、教育現場での活用に大きな可能性を感じました。
次回、【やってみたシリーズ】は、インターネットを使わずに校内のネットワーク内で、おげんまるなどのDifyチャットボットを使う方法についてやってみます!
これができれば、個人情報の漏洩に関する心配も一気に激減させることができますね!
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