このシリーズで紹介するのは、教員として38年間務めてきた中学校の先生が教育現場で体験したことから学んだ知恵です📕
教育現場をリードし、支援している先生方に役立つ考え方だと思って記事執筆を依頼いたしました😊
今回は「不登校と特別支援教育」というテーマでお送りします。
著者の自己紹介
某所の公立中学校で38年間、センセ(先生)してました。
定年退職した今は、お母さんや、学校の先生をエンパワメントさせていただくエンパワラーとして活動しています。 (「エンパワラーって何やねん?」って思われた方は、お手数かけますがわたしのブログを覗いてくださいませ。
こころのエネルギー
『不登校の原因は、こころのエネルギーの減少、枯渇にある。』と、わたしは考えています。
人には、前向きに動くために必要なこころのエネルギーっていうものがある。
そのこころのエネルギーが減ってきたら、だんだん前向きには動けなくなっていく。
こころのエネルギーが最終的に枯渇してしまったら、前向きには動けなくなってしまう。
不登校は、このこころのエネルギーの減少、枯渇によって起こっている!
…っていうことを、わたしは現場での38年間、教員としてこどもたちにかかわってきた経験+みずからの挫折経験から、そう確信しています。
特に、教員生活最後の10年間、わたしはこども支援コーディネーターとして不登校担当、別室登校担当をさせていただきました。
不登校のこどもたち、別室登校のこどもたち、そして、そのこどもたちのお母さん方に、物理的にも精神的にも存分にかかわることができたんですよね。
そのときの経験が、こころのエネルギーについてのわたしの考えをつくり上げ、そしてまとめ上げてるのに大いに役立ってくれました。
これから先の話を進めさせていただくためにも、まずはこころのエネルギーについて、わたしの考えをお伝えさせていただきます。
まずは、そのこころのエネルギー、どんなときに減ってしまうかというと、
- 前向きに動いたとき
- こころが冷まされたとき
だとわたしは考えています。
学校生活において授業を受けたり、友だちと遊んだり、クラブの練習したりしたら、こころのエネルギーは減ります。
前向きに動いてますもんね。
そして、勉強がわからなかったり、先生に叱られたり、友だち関係で悩んだり、クラブで先輩にどやされたり…、いろんな場面で不快を感じたときもこころのエネルギーは減ってしまいます。
不快を感じたら、こころは冷まされてしまうんですよね。
こころが冷まされたとき、こころのエネルギーは結構たくさん減ってしまいます。
そう考えたら、学校っていうところは、前向きに頑張らなアカンわ、不快な気持ちになることも多々あるわ…、こころのエネルギー、メッチャ消費するところなんですよね。
なので、学校生活を当たり前に過ごすためにも、こころのエネルギーをしっかり貯めなければなりません。
では、こころのエネルギー、どうやって貯めたらいいのでしょうか?
わたしは、
こころのエネルギーは、こころをあたためることによって貯めることができる
と考えています。
…って、調子よく語らせていただいてますが、このまま続けると、とんでもなく長くなってしまいますので、こころのあたため方については省かせていただきますね。
詳しくお知りになりたい方は、お手数ですがわたしのブログをお読みになってください。
不登校の様々な原因
さて…
こころのエネルギーをとことん消費する学校で頑張るために、本来なら、家庭でこころをあたためてもらって、こころのエネルギーを貯める。
貯めたエネルギーでもって、学校生活頑張る。
そんな循環ができるのが理想なのですが、そうはいかなくなっているのが今の日本の社会やと、わたしは思っています…。
家庭っていう場所において、こどもたちにとって物理的にも、そして何より精神的にも深いかかわりがあるお母さん。
そんなお母さんが、今の日本の社会の生きづらさの中で、メッチャしんどい思いをせざるを得なくなっている…
しかも、そんなお母さんが増えてきている…。
わたしは、そう感じています。
そして、不登校の数も増加の一途をたどっている…。
わたしは、このふたつに因果関係があるのを感じずにはいられません。
不登校の増加の原因はいろいろあるでしょう。
そのうちのひとつ、しかも結構大きな原因のひとつは、
お母さんがしんどくなってきているがために、こどもたちが家庭でこころをあたためる、っていうことが困難になってきているからではないか、って思わざるを得ない…。
そうわたしは考えています。
では、不登校の増加の原因、他にはどのようなものが考えられるでしょうか。
わたしは、長期間の臨時休校も含め、コロナの影響があるのは間違いない、と思っています。
コロナそのもの、それに次から次へと現場に下ろされてきたコロナ対策が、こどもたちのこころに大きなマイナスの影響を与えているのを、現場でいるとき、ひしひしと感じていました。
過去をふりかえると、「9月1日、長期の休み明けにみずから命を絶つ子が一年間のうちで一番多い。」っていう状況が続いていましたから、学校っていうものの存在が死にたいくらいの重荷になっている子が存在しているのは間違いないでしょう。
だとしたら「無理して学校に行く必要はない。命を絶つくらいなら休もうよ。」ってわたしも言います。
不登校と特別支援教育
それにしても…
『登校することが死にたいくらいの重荷になってる学校』って…。
今を生きるこどもたちにとって、学校がそんな所になってしまっているのだとすれば、
学校が変わらなければならない部分は絶対にある!
そうわたしは考えています。
ある不登校の子のお母さんに「日本の学校は『横並び一列教育』ですから、うちの子は登校できなくなってしまったんです…。」って言われたことがあります。
確かに、今の日本の教育は、こどもたちをある一定のラインに横一列に並べることを重んじているところが間違いなくあります。
「どの子も、ここまではできるようにしないと。」っていう基準が、勉強面や生活面、あらゆる場面に存在して、そこに並ぶことができない子がいたら、並ぶことができるように先生は必死になって指導する…みたいな。
ただ、「これって大切なことでもあるよな。」ってわたしは思ってます。
こどもたちが社会に出たとき、どの子も苦労しなくてもいいようにしてあげないと…。
っていう先生の思いは、決して否定されるべきものではない、と思いますので。
でも、どうしても横一列に並ぶことができない子、横一列に並ぶことが難しい子、横一列に並ぶことを良しとしない子らにとって、そんな先生の思いや社会全体の風潮が重荷になってしんどい思いをすることになってしまうんですよね。
また、横一列に並べない(並ばない)ことで、ダメな子、わがままな子、などというレッテルを先生からも周りのこどもたちからも貼られてしまうことが、実際に、多々あるのです。
その結果、こころが冷まされてしまい、前向きに動くために必要なこころのエネルギーが減ってしまって、学校に行けなくなってしまう…。
不登校の増加の原因は、そんな横並び一列教育に耐えられなくなってしまっている子が増えているから、ということも考えられるでしょう。
ただし、これについても、わたしはやはり、家庭でこころのエネルギーを貯めることができずにいる子が増えたからちゃうの?って思っているのですが…。
そうは言っても、っていうか、こどもたちがそんな状況だからこそ、
学校でもこどもたちのこころをあたためることを、すべての教育活動において考え実行していくべきだし、少なくとも、こどもたちのこころを冷ましてしまう場面を減らせるものなら減らしていく努力をすべきや
とわたしは思っています。
なぜなら、学校が横並び一列教育をしているがために、特定のこどもたちを学校から排除してしまっているのですから。
そんなことは、あってはならない。
特に公立の学校では。
校区に住んでいるすべてのこどもたちが登校できて、ひとりひとりに安心できる安全な居場所が保障されている。
公立の学校は、そんな場所でなければならない。
わたしはそう考えています。
そこでカギになるのが支援教育なのです。
横一列に並ぶことができない子、並ぶことを良しとしない子には、発達の特性が強く出ている場合がある、とわたしは考えています。
多動の特性が強く出る子は、「落ち着いて授業を受ける。」という横並び一列のラインに並ぶのが難しいですもんね。
授業中であるにも関わらず、周りの子に声をかけてしまったり、いきなり立ち歩いてしまったり…。
そうなると、先生から注意されますし、あまりに回数が増えると叱られてしまったりします。
周りのこどもたちから「ええ加減、学習しろよ。」みたいなひどい言い方をされてしまうことも…。
それが積み重なると、不快な気分によってこころが冷まされてしまい、こころのエネルギーが減少、学校へ行きたくなくなってしまいます。
それでも頑張って登校しているうちに、こころのエネルギーが枯渇し、まったく動くことができない状態に…。
そして、ついに不登校になってしまう…。
だとしたら、こんなことになってしまう前に何らかの対応をする必要があるです。
そのとき、支援教育の視点でもってこの子のことを見ることができたら、その子の集中が途切れてしまわないよう環境を整えたり、授業の途中に身体を動かす場面をつくったりという手立てを講じることができます。
それができたら、この子がこころを冷まされてしまう頻度は間違いなく減りますよね。
不登校にならなくてもよくなると思います。
そして、その上に、さらにこの子の特性を活かすことができたとしたら…。
その子のこころをあたためることすらも可能でしょう。
こどもたちを排除するのではなく、受け容れて活かすことができる学校。
そんな学校づくりができる重要なカギ。
そのカギとなるのが支援教育やとわたしは思っています。
次回は…
次回の記事では「教員生活38年間から得た宝物④~中学校におけるインクルーシブ教育のコーディネート~」についてお伝えします。
コメント