引用元:インクルーシブ教育システム構築支援データベース
こちらの記事は、いただいた質問に対する情報提供の目的で作成いたしました。
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所のインクルーシブ教育システム構築支援データベース(インクルDB)から、R02-0020JC2-LDの事例を紹介しています。
書字障害がある中学生への授業・定期試験における合理的配慮
対象生徒の実態
障害種:学習障害
在籍:中学校2年生(通常の学級)
友人関係や集団適応:良好であり、係、当番、部活動など意欲的に取り組んでいる。
【重要!】合意形成に至るまでの経緯
保護者が就学前の教育相談を希望し、校長と特別支援教育コーディネーターが同席してそれを行った。その際に学習障害と小学校の支援についての報告があり、B中学校への入学後も同様の支援を希望した。
B中学校は学習障害に対して行う合理的配慮の一つとして、授業中にパソコンを使用することを提案したところ、本人と保護者からは入学後しばらくは中学校生活での学習に慣れてから検討したい旨の返答があった。
入学後は、校内特別支援部会や大学教員で連携し、小学校で行っていた支援を継続していたが、保護者からの再度の教育相談の要望があった。英語の宿題に大きくつまずくなど、中学校の学習に困難さが見られている状況であること、家ではタブレット端末の読み上げアプリを使用した学習を取り入れていることの話があったため、パソコンの導入を提案し、本人の要望を踏まえて導入する方向で同意を得た。
また本人もパソコンを使用して学習をすすめることに前向きであったため、授業中にパソコンを活用する支援を行うこととした。
この事例では、学校がリードする形でパソコンが導入されていますね💡
【資源の活用】専門性のある指導体制の確保
定期的に大学教員、特別支援教育コーディネーター、学級担任、管理職、特別支援教育指導員等とケース会議を行い、情報処理教育を専門とする大学教員からパソコンの使用に関する基礎的なことや、活用方法のアドバイスを受けた。また特別支援教育を専門とする大学教員からはパソコンでの学習について考えられる支援について助言を受けた。
大学教員2名が入って手厚く支援しています💡
【自立活動の視点】学習上又は生活上の困難を改善・克服するための配慮
校内全ての教職員に、A生徒が授業中やテストなど、あらゆる教育活動においてパソコンを利用することの了解を得るとともに、学級に対しても配慮をするよう協力を求めた。まずは授業中での使用を行い、本人の要望に応じてテストや学級活動等の時間に活用すること目指し、本人の機器操作力向上を目標とした配慮を行った。
定期テストでは、前年度からの取組の、特別支援教育支援員による読み上げを継続した。これは、A生徒が読み飛ばしや読み間違いなど困難さを覚えていることを教科担任、特別支援教育支援員が見取り、行っている。
また、定期テストでは国語の解答欄を、升目に文字を書く形式ではなく、本人が書きやすいような解答欄を、教科担任が個別に作成した。
経験を通して生徒自身が適した環境を理解し、将来的には自分自身で主体的に環境づくりができるようになることが期待されます💡
学習内容の変更・調整
パソコンの利用については、本人の要望により行うこととし、理科などの板書の比較的多い教科については、パソコンのカメラを利用した撮影を行い、自宅でノートを整理するなどでパソコンを活用した。また、社会のポートフォリオ作成などでは、パソコンを用いた作成を認めフォーマットをファイル形式で渡すなどの配慮を行った。他教科は、本人が「手書きの方が書きやすい」と特別支援教育支援員に話したので、本人の取り組みやすい方法をとった。
本人の様子に配慮した保護者からの要望により、国語における漢字小テストは、漢字の読み取りのみにした。また、定期試験における漢字の書き取りについては、漢字変換で適切な漢字を選択することで評価した。
英語の小テストについては、教科担任と特別支援教育支援員が話し合い、英単語のつづりは選択項目をテスト用紙に設けた。英作文については、テスト用紙にランダムなフレーズを予め記入しておき、本人は並び替えを行うことで受験した。
学習指導要領の記載を柔軟に解釈した対応になっています。
情報・コミュニケーション及び教材の配慮
配付した教材等については、電子化を認め、パソコンのカメラで撮影することを許可した。社会の教材では、自分の考えたことを、色を変えて記入するなど、機器操作力が向上し、学習課題について思考する時間が確保できた。
児童生徒、協力員、保護者、地域の理解啓発を図るための配慮
事前に当該生徒が在籍するクラスの生徒に対し、本人がパソコンを使用することに関して理解と協力を求めた。
A生徒の在籍学級の生徒に対し、A生徒がパソコンを使用することに関しての理解と協力を求めた。昨年度のA生徒の母親からの要望をクラスに周知し、A生徒の困難さにどう取組んでいくか説明した。
取り組みの成果と課題
学校からの、積極的な合理的配慮の提案が読み取れる事例です💡
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