
凄すぎるという噂の「ChatGPTのdeep research」を使って、JSL対話型アセスメントDLAについて調査してみました。結果は一言「凄すぎます!」
外国人児童生徒の日本語能力のアセスメントに興味がある方々は是非ともご一読ください。研修でも使える内容となっています。また、「外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメントDLAを、AIでサポートします」では、本研究室が作成したオリジナルシートとAIチャットボットの組み合わせでの評価システムを紹介しています(近日公開予定?)。
概要と目的
JSL対話型アセスメント(DLA)とは、「Dialogic Language Assessment」の略称で、文化的・言語的に多様な背景をもつ外国人児童生徒の日本語能力をマンツーマンの対話を通して評価する支援付きの評価ツールです (リンク)。日常会話はできるが教科学習でつまずきを感じている児童生徒を主な対象としており、一人ひとりのニーズに応じた指導計画を立てて学習意欲を高めることを目的としています (リンク)。背景には日本の学校に在籍する外国人児童生徒の増加があります。文部科学省の令和3年度調査速報によれば、日本語指導が必要な外国籍児童生徒は47,627人と前回調査より6,872人増加し、この10年で約1.5倍に増えています (リンク)。しかしそのうち2割以上は特別な日本語指導を受けられておらず、さらに約2万人の外国人児童が未就学または就学不明という課題も指摘されています (リンク)。こうした状況で学校現場には共通の評価指標が求められ、従来のテストでは認知力把握と言語力測定が困難だったため、2010~2012年度に東京外国語大学に委託してDLAの開発が進められました (リンク)。開発にあたっては、子どもの言語能力を以下の3側面で捉えています (リンク): (1) 会話の流暢度(CF) – 学校生活の日常会話力で第二言語では習得に1~2年かかる (リンク)、(2) 弁別的言語能力(DLS) – 音韻意識・フォニックス・語彙・文法構造など個々の技能で習得時間が異なる要素 (リンク)、(3) 教科学習言語能力(ALP) – 国語・算数・理科・社会など学習場面で必要な高度な言語運用能力で習得に5年以上を要するとされる (リンク)。日常会話が流暢でも学習場面の日本語では語彙力・認知力の差で困難が生じることが多く (リンク)、DLAはこうした潜在的な学習言語能力を対話を通じて測定し、適切な学習支援計画策定の手がかりを得ることを目的としています (リンク)。実際、DLAはカナダで開発されたOBC(バイリンガル児童の会話力テスト)や中島和子・櫻井千穂による対話型読解力評価、岡崎敏雄によるTOAM語彙テストなど先行研究の知見を取り入れて開発されており、複数言語環境の子どもの評価に関する国内外の英知を集約したものです (リンク)。文部科学省は学校で児童生徒の日本語力を把握し指導方針を検討する参考としてDLAを作成し、関係者に積極的な活用を呼びかけています (リンク)。
評価方法と構成
DLAは紙筆の筆記試験ではなく対話形式で行われ、評価の過程自体を学びの機会と捉える点に特徴があります (リンク)。指導者(テスター)が児童生徒とマンツーマンで向き合い対話することで、信頼関係(ラポール)を築きつつ子どもの力を最大限に引き出し、同時に今後必要な学習内容や領域を見極めることを狙いとしています (リンク) (リンク)。評価は次の手順・構成で実施されます(所要時間は目安) (リンク):
- 導入会話(約5分) – リラックスした対話でウォーミングアップし、児童の生活状況や興味を把握します ()。
- 語彙力チェック(約10~15分) – 絵カードなどを用いて基本語彙の理解度を確認します ()。
- 〈話す〉テスト(約20~30分) – 個人の日本語による会話力を評価。基本的な会話から認知的に負荷の高い話題まで、対話形式で質問し、流暢さ・やりとりの応答・論理的表現力などを多面的に見る (リンク)。児童の会話力に問題がないと判断されれば省略も可能です (リンク)。
- 〈読む〉テスト(約20~30分) – 読解力を評価。児童と相談してレベルに合った文章を一緒に読み、内容について対話し理解度を測ります (リンク)。同時に音読の様子や読書習慣・興味も観察し、読書への関心を高める契機とする狙いもあります (リンク)。
- 〈書く〉テスト(約20~40分) – 記述力を評価。絵やテーマに沿って文章を書いてもらい、文のつながり・表現のまとまり具合などから作文力を判断します (リンク)。書く過程での思考力にも着目します (リンク)。
- 〈聴く〉テスト(約15~20分) – 聴解力を評価。授業場面を想定し、教師の話や指示を聞いて理解できるかを測ります (リンク)。内容を整理し活用できるかも含め、児童の授業参加の可能性を探る観点で実施します (リンク)。
まず初めに①導入会話と②語彙チェックで児童の大まかな日本語レベルを把握し、その結果を踏まえて③~⑥の各技能テストを行うか判断します (リンク)。児童によっては既に十分な会話力があれば〈話す〉を省略するなど柔軟に対応し、テスト実施順序も状況に応じて変更可能です (リンク)。一度に全てのテストを実施するのは望ましくなく、1回のセッションは45~50分以内に留め、複数日に分けて行うことが推奨されています (リンク)。評価者は児童の様子に十分配慮し、緊張を和らげ意欲を引き出すよう努めます。子どもが答えに詰まった時は辛抱強く待ったり、ヒントを出したりして、できるだけ持てる力を発揮できるようにするなど情意面への配慮も特徴です (リンク)。評価後はDLAの結果を**「JSL評価参照枠」と照合して総合評価します (リンク)。この参照枠は日本語習得段階を6つのステージに区分し、「在籍学級への参加状況」と「必要な支援の段階」を対応付けた指標です (リンク)。例えばステージ1は「学校生活に必要な日本語の習得が始まった段階」で手厚い初期支援が必要、ステージ2は「支援を受けながら基礎的な日本語習得が進んでいる段階」 ()、中間のステージ3・4では日常的な話題は理解でき学級活動に部分的~概ね参加できる状態 ()、ステージ5になると教科内容に関わる話題も理解し必要に応じた支援で授業に参加可能、そして最高段階のステージ6では教科の内容に関する話題を理解しほぼ自立して積極的に授業参加できるレベルとされています ()。DLA実施後に判定されたステージをもとに、児童が在籍学級でどの程度のサポートがあれば学習に参加できるか、今後どの分野の指導に重点を置くべきかといった指導方針を検討します (リンク) ()。なお、対話型の評価ゆえに評価者の質問の仕方や応答によって結果が左右される可能性**が指摘されており、信頼性確保のためには評価者のトレーニング充実や評価基準の継続的な検証が必要とされています (リンク)。こうした課題にも対応しつつ、DLAは画一的なペーパーテストでは捉えきれない子どもの日本語力を立体的に把握する方法として期待されています。
実施方法と活用事例
DLAの実施タイミングは学校現場の状況に応じて様々です。一般には外国人児童生徒が入学・編入してきた時期に初期評価として実施し、その後学期末や学年末など学習の節目に再度実施して成長を測るケースが多く想定されています (リンク)。文部科学省も「学期末・学年末など定期的にDLAを行い、児童の変化や到達度を把握してほしい」としており (リンク)、支援の要不要や進捗確認のため年に1度程度各技能の評価を行う活用法が示されています (リンク)。誰が実施するかについては、在籍校の担任教師や日本語指導担当教員、あるいは日本語支援員(非常勤講師や地域の日本語教室スタッフなど)がテスターとなる場合があります (リンク)。学校内で複数の教師が関わる場合、DLAの結果を共有して指導に活かす工夫もされています。例えば大阪府のある小学校B校では、年度末にDLAを実施する際にその様子をビデオ録画し、関係する教職員全員で視聴するようにしています (リンク)。これにより、実際にDLAを担当したことのない教師も含め、児童の日本語運用の実力や課題を共有理解し、今後の支援方策を協議できる体制づくりに役立てているとの報告があります (リンク)。また、東京都などではDLAを効果的に実施できる教員を増やすための研修も行われています。東京都教育委員会は令和6年度にDLA実施者養成講習を実施し、教員に対しDLAの手法や評価のポイントを習得させる取組を始めています (リンク)。一方、具体的な活用事例として、東京都墨田区の錦糸小学校での実践が挙げられます。墨田区は日本語指導が必要な児童が多く、同校では約220名中50名が日本語教室で指導を受けている状況でした ()。日本語担当教員2名と支援員4名が協力して、DLAの結果をJSLカリキュラム編成に活用する試みが報告されています () ()。具体的には、来日後1年以上経過した小学3年生7名を対象に年度初めに「導入・語彙」「話す」「書く」のテストを実施し、年度途中に「読む」のテストも行いました ()。その結果、日常会話力(話す力)に比べ、読み書きの力が大きく劣っていることが全体的に明らかになり、各児童ごとの「書く」課題(作文上の弱点)も浮き彫りになりました ()。例えばある児童は「話す」は5段階評価で4.6と高かった一方、「書く」は2.4に留まるなど、口頭表現と文章表現のギャップが数値化されています ()。そこで日本語指導担当者はDLAの評価結果と児童同士の関係性なども考慮し、7名を2つのグループに分けて指導計画を立案しました ()。一方のグループは会話はできるものの学習言語面が弱い児童たちで、読み聞かせや絵本の内容要約練習など読解・記述力を伸ばす特別な指導を行いました(実践例①) () ()。もう一方のグループには基礎的な日本語運用力自体に課題がある児童が含まれていたため、サバイバル日本語や基本語彙の定着を図りつつ簡単な文章を書く練習から取り組む支援をしました(実践例②)。このように、DLAの結果をもとにグルーピングして適切な指導を行ったところ、児童は自分の課題を自覚して意欲的に学習に取り組むようになったとの報告がなされています。DLAの導入によって教師側も児童の日本語力を客観的に把握でき、指導の優先順位を明確にできた点で大きな効果があったとされています。こうした成功事例は、他校でDLAを活用する際の参考になる貴重なケーススタディといえます。
研究や導入事例
DLAに関する研究は、開発段階から現在まで継続して行われています。開発時には前述のように国内外の評価研究(OBCや対話型読書力評価、TOAMなど)の成果が取り入れられました (リンク)。東京外国語大学や有識者による検討を経て、平成26年(2014年)に文部科学省から『外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメント(DLA)』解説書が公刊され、全国の教育委員会へ周知されました。その後、現場での試行と改良も重ねられています。例えば櫻井千穂氏らはDLA実施者の「気づき」と「成長」について研究し、評価を担当した教師が児童の新たな一面に気づいたり、自身の指導スキル向上につながったことを報告しています
。実際にDLAを行った教師からは「普段の授業では見えなかった子どもの力が見えた」「児童の母語や生活背景を聞く中で理解が深まった」等の声があり、評価者自身の専門性が高まる副次的効果も指摘されています。また、広島大学の渡部倫子氏らは現場教員への実施支援を通じた成果を分析し、DLA導入が学校の日本語指導体制の改善に寄与し得ることを示唆しています ()。一方で、文部科学省が開発したこのような評価ツールを実際に活用している学校はまだ少ないとの指摘もあります (リンク)。文化庁の報告書でも「DLAのような客観的評価ツールを活用する学校は依然として多くなく、日本語能力の評価自体が現場に十分浸透していない」ことが課題として挙げられています (リンク)。導入が進まない要因として、評価の実施に時間と人手を要することや、教員が評価結果を指導に結びつけるノウハウが不足していることなどが考えられます。しかし近年、外国人児童生徒の受け入れが多い自治体を中心にDLAを積極的に取り入れる動きが見られます。前述の東京都墨田区のように区をあげてJSLカリキュラムに組み込み成果を上げている例や、浜松市・川崎市など多文化共生教育に熱心な自治体で研修を行い導入を図るケースがあります(※浜松市などは独自の日本語能力チェックシートを作成する動きもありますが、DLAの概念を参考にしています)。さらに、文部科学省の委託研究としてDLAの改訂・発展も進められています。令和5~6年度には東京外国語大学により「日本語能力評価方法の改善のための調査研究事業」が実施され、DLAの評価項目を見直し各学齢段階・習熟ステージに対応したCAN-DOリストの開発や評価基準の検証が行われています (リンク)。このプロジェクトでは中島和子氏(トロント大学名誉教授)を部門長としてDLA改訂チームが編成されており (リンク)、より精度の高い改訂版DLAと「ことばの教育の参照枠」の整備が目指されています (リンク) 。こうした研究開発と並行して、全国各地で普及セミナーや実践報告会も行われ、DLAの有効性や課題に関する知見が蓄積されています。今後の展望としては、DLAを通じて得られたデータを蓄積・分析し、日本語指導の成果や児童の言語発達を客観的に示すエビデンスを構築すること、評価結果に基づいた効果的な支援モデルを各地域で共有することなどが課題とされています。総じて、DLAはまだ発展途上の評価手法ではありますが、日本語を母語としない児童生徒の学びを支える重要なツールとして徐々に現場への定着が図られている段階と言えます。
関連教材やリソース
DLAに関する教材・資料は文部科学省および開発機関から公開されています。文科省のCLARINETサイトでは『外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメント(DLA)』のマニュアル冊子(PDF)が無償提供されており、表紙・序章から各技能テストの解説、第7章までを章別または一括でダウンロードできます (リンク)。このマニュアルには**「JSL評価参照枠<全体>」「参照枠<技能別>」など評価基準の詳細や、評価結果を記録する診断シートの書式例、評価者向けの実践ガイドも含まれており、DLA実施者にとって必携のガイドラインとなっています (リンク) 。また、別冊資料として「DLA〈読む〉レベル別テキスト」(児童の読解力に応じた複数の読み物テキスト集)が用意されており、希望者は文科省国際教育課に連絡することで入手可能です (リンク)。聴解テスト用の映像教材も開発されており、東京外国語大学が制作した動画(児童が授業場面を見るための教材映像)が評価時に使用できます (リンク)。評価者はこれらテキストや映像、語彙カードなどの教材を組み合わせてDLAを進めます。さらに、東京外国語大学 多言語・多文化共生教育研究センターのウェブサイトでは「DLA〈使い方映像マニュアル〉」が公開されています (リンク)。これは1本10~20分程度の動画で構成された全30本の教材映像で、導入会話の進め方、各技能テストの具体的な質問例、評価時の留意点などを実演付きで解説したものです (リンク)。DLA開発者自らが出演し模擬評価を行っているため、初めてDLAを扱う教師でも手順をイメージしやすいと好評です。また、各地の教育委員会や研修機関もDLA関連の資料を提供しています。例えば北海道教育委員会は「Q&A形式のDLA活用ガイド」を作成し、評価の留意点や結果の活かし方を解説しています ()。群馬県教育委員会の多言語支援サイト「ハーモニー」では前述のTUFS制作の映像マニュアルや文科省マニュアルへのリンク集が掲載され、現場教員がすぐアクセスできるようになっています (リンク)。さらに、有識者による解説記事や書籍も参考になります。小学館『みんなの教育技術』ウェブ版ではDLAの概要や特徴を平易にまとめた解説記事が公開されており (リンク)
、現場教師が知っておきたいポイントをQ&A形式で読むことができます。研究者向けには、中島和子・櫻井千穂著『対話型読書力評価』(2012年) (リンク)がDLA開発の土台となった評価手法として参考になりますし、岡崎敏雄「学習言語能力をどう測るか―TOAMの開発―」(2002年)は語彙テスト開発の背景を知る上で有用です (リンク)。総合的な日本語教育のガイドラインとしては文科省の『JSLカリキュラム』シリーズも挙げられますが、DLAに直接関連する資料としては前述のマニュアル・映像以外に研修会の報告書や実践事例集**があります。大阪府教育委員会は「日本語指導実践事例集」にDLAの活用例を載せており、教師間での情報共有方法など具体的な工夫が紹介されています(例:前述のB校のビデオ活用) (リンク)。今後は文科省や大学研究機関からDLAに関する成果報告や改訂版ガイドラインが公表されていく見込みです。DLAに興味を持った教育関係者は、まず文科省サイトから公式マニュアルを入手し、TUFSの映像マニュアルで実施の流れを確認するとよいでしょう。それらを活用しつつ、必要に応じて各自治体の研修資料や先行事例に学ぶことで、DLAを効果的に現場導入することができます。各種リソースを駆使してDLAへの理解を深めることで、日本語を必要とする児童生徒へのより適切な支援につなげていくことが期待されています。
参考文献・情報源: 文部科学省「外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメントDLA」(リンク)、東京外国語大学多言語多文化共生センター「DLA教材について」 (リンク)、小学館「みんなの教育技術」DLA解説記事 (リンク) 、墨田区錦糸小学校における実践報告 () ()、文化庁『外国人児童生徒等教育の現状と課題』(令和4年) (リンク)ほか.
【要約版です】読むのが大変な方はこちらをどうぞ
JSL対話型アセスメント(DLA)とは?
日本の学校には外国にルーツを持つ児童生徒が増えており、日本語指導の重要性が高まっています。しかし、日本語が話せても教科学習に必要な日本語能力(学習言語能力)が不足しているケースが多く、適切な支援を行うための客観的な評価ツールが求められています。
**JSL対話型アセスメント(DLA:Dialogic Language Assessment)**は、外国人児童生徒の日本語能力を対話形式で評価し、一人ひとりに適した指導計画を立てるために開発されたアセスメントツールです。本記事では、DLAの概要、評価方法、実施手順、活用事例、研究動向、関連資料について詳しく解説します。
1. DLAの目的と特徴
◉ DLAの目的
DLAは、次のような目的で活用されます。
- 外国人児童生徒の日本語能力を適切に評価する
- 教科学習に必要な日本語能力(学習言語能力)を測る
- 学習の困難さを特定し、適切な支援計画を立てる
- 教師が児童の言語習得状況を理解し、効果的な指導を行う
◉ DLAの特徴
- 対話形式で行うため、児童の日本語運用力を実際のやりとりの中で評価できる
- 会話の流暢さだけでなく、教科学習で必要な言語能力を測定できる
- テスト自体が学習の機会となり、児童の言語習得に貢献する
- 評価後の結果を活用し、指導計画の作成や支援方法の決定に役立つ
📌 日本における外国人児童生徒の現状
文部科学省の2021年(令和3年)の調査によると、日本語指導が必要な児童生徒は47,627人にのぼり、2016年(平成28年)と比較して約1.5倍に増加しています。しかし、そのうち約20%は十分な日本語指導を受けておらず、さらに約2万人が未就学または就学不明となっています。
こうした背景から、文部科学省はDLAを開発し、日本語指導が必要な児童生徒の適切な評価と支援を促進しています。
2. DLAの評価方法と構成
◉ DLAの評価の流れ
DLAは6つのステップで構成され、対話を通じて児童の日本語能力を多面的に評価します。
ステップ | 内容 | 目的 |
---|---|---|
①導入会話(約5分) | 児童がリラックスできるよう、日常会話を行う | 児童の生活状況や興味を把握し、安心感を与える |
②語彙チェック(約10〜15分) | 絵カードを用いて基本語彙を確認 | 児童の語彙力を測定し、苦手な分野を特定する |
③話すテスト(約20〜30分) | 自由会話と指定されたテーマについて話す | 流暢さ、応答の速さ、論理性を評価 |
④読むテスト(約20〜30分) | 短い文章を音読し、理解度を確認 | 児童の読解力と読書習慣を測定 |
⑤書くテスト(約20〜40分) | 絵やテーマを基に文章を書く | 記述力、構文の理解、文章のまとまりを評価 |
⑥聴くテスト(約15〜20分) | 授業場面を想定し、指示や説明を聞く | 児童の聴解力と授業参加の可能性を評価 |
◉ JSL評価参照枠(6段階評価)
DLAの評価結果は、**6つの習得段階(ステージ1〜6)**に分類されます。
ステージ | 状態 |
---|---|
1 | 日本語学習の初期段階(基礎的な語彙習得が必要) |
2 | 簡単な日常会話が可能(支援が必要) |
3 | 日常会話ができるが、教科学習に課題あり |
4 | 授業内容をある程度理解できるが、支援が必要 |
5 | 教科の内容を理解できる(部分的な支援) |
6 | 授業にほぼ自立して参加可能 |
3. 実施方法と活用事例
◉ DLAの実施タイミング
- 入学・編入時:初期評価として実施し、児童の日本語習熟度を把握
- 学期末・学年末:学習の進捗を確認し、指導計画の見直し
- 定期的(年1回以上):長期的な支援の効果を測定
◉ 活用事例
✅ 東京都墨田区 錦糸小学校の取り組み
- DLAをもとに児童の日本語力を分類し、指導を最適化
- 「話せるが読めない」児童には読解・記述支援
- 「基本的な日本語が未習得」児童には基礎語彙の指導
- 結果:児童の日本語能力が向上し、学習意欲も増加
✅ 大阪府の取り組み
- DLAの評価をビデオ録画し、教師間で共有
- 児童の実力を客観的に把握し、効果的な支援を実施
4. 研究や導入事例
- 2014年:文部科学省がDLAマニュアルを公刊
- 2021年以降:東京都・浜松市・川崎市などで導入拡大
- 東京外国語大学が評価基準の改訂研究を実施中
- 広島大学の研究では、DLA導入により日本語指導体制が強化されたことを示唆
5. 関連教材・リソース
🔗 DLAマニュアル(文部科学省) ダウンロードはこちら
🔗 JSLカリキュラム(指導計画に活用可能) 詳細はこちら
🔗 東京外国語大学「DLA実施マニュアル動画」 視聴はこちら
6. まとめ
✅ DLAは外国人児童生徒の学習言語能力を正確に測定するツール
✅ 評価結果を活用することで、より適切な日本語指導が可能になる
✅ 導入事例や研究が増えており、活用の幅が広がっている
コメント