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特別支援教育における生成AIの活用 ~研修会資料~

特別支援教育の現場では、生成AI(Generative AI)の活用が注目されています。指導の効率化や、児童・生徒一人ひとりに合った支援を実現するための強力なツールとして期待されている生成AIですが、その具体的な活用方法や注意点についてはまだ十分に知られていない部分もあります。
本吉研究室は、2023年度から生成AIを教育現場でどのように活用するのか研究してきました。この記事は研修会資料として公開しています。随時更新してきますので参考にしていただければと思います。

デモンストレーション「そもそも生成AIはどんなことができるのか?(各種生成AIを使って)」

「知的な作業のサポートとして活用」
※ChatGPTなどの生成AIが発表された2023年は、チャット形式で質問事項に回答してくれるだけだったのが2025年現在、画像や音声、動画の生成ができるようになりマルチモーダルAIとして進化し続けています。(動画参照)
・文字でのコミュニケーション(様々な質問に答えてくれる)
・画像の読み込みと画像生成(画像からの情報生成)
・情報収集やデータ分析(客観的な評価やニーズに応じた集計)
・資料の読み込みと文章作成(各種書類の作成サポート)
・音声入力と音声出力(音声会話でのサポート)

説明1「生成AI活用の留意点(ポイントとハードル)」

文部科学省から出ているガイドラインVer.2.0(令和6年12月26日公表)要約記事紹介
・各県教育委員会等から出ているガイドライン
・情報の管理(アカウントと個人情報)
「活用アイデア」の発想と「プロンプト」の考案力は高度な専門性の域に入る

説明2「特別支援学校での生成AI活用の可能性」

・個々の実態・ニーズに応じるための情報的支援(相談相手)
・指導計画の作成支援(資料作成の支援)
・教材作成の支援(問題作成、絵カードなど)
・児童・生徒の活用(調べ物をする、自分で問題を作る、相談相手になる)

説明3「教育現場における生成AI活用の課題点」

※生成AIを学校現場で使用するには以下のような課題点が挙げられます。
・生成AIどれを使ったらいいの問題
・生成AIを使うためのアカウントや利用料金
・どのように研修し現場で実践していくのか未知数(プロンプトの入力スキルの向上等)

演習「生成AI活用の支援 チャットボットの紹介」

学校現場のDX化を図る上で生成AIの活用は今後重要な位置付けになると考えられます。本吉研究室では学校現場でのより有効な活用方法について2023年度から研究してきました。
試行錯誤の結果導入したのがDifyでのAIチャットボット作成です。本研究室で運用するサイトに組み込み公開することで、このサイトのURLを知っていれば生成AI活用時に必要なアカウントを使うことなく誰でも無料(2025/1/10現在)で利用できるようにしました。
本研究室が運営するAIチャットボットを活用する利点として以下の点が挙げられます。

  • 用途に応じたAIチャットボットを使うことで、目的とした情報に確実にたどり着ける。
  • チャットボットから入力内容について問われたり助言を受けながら会話形式で進めることで、プロンプトを意識することなく取り組むことができる。
  • AIチャットボットに学習指導要領など特化した情報を学習させることでハルシネーションのリスクが激減する。
  • セキュリティにおいては、独自のサーバーを運用し安全性を高めるとともに、生成AI(API)から外部の学習に使われないようにするなど、チャットボットを安心して活用できる環境を構築しています。デメリットとしては、運用費が発生することです💰
    ※現在は運営費は科学研究費補助金(有限)で賄っています。

以下は、本吉研究室のAIチャットボットの一部です(以外は下記のリンクからどうぞ)。演習として使用してください。
チャットボットを使ってみる(チャットボットリスト)

補足「教師のためのプロンプト研修」

教師自身が生成AIを使用する場合のプロンプト研修のための資料です。

プロンプトの質が生む違い

AIを活用した指導計画の作成では、プロンプトの質が生成結果に大きな影響を与えます。本記事では、初心者と熟練者によるプロンプト作成の違いを具体例を交えて解説し、より効果的なプロンプト作成スキルを学びます。また、RAG(Retrieval-Augmented Generation)を活用する方法も紹介します。

初心者によるプロンプト例

プロンプト内容: 「算数の授業計画を作成してください。」

生成結果:

  • 授業タイトル: 算数の授業
  • 学年: 小学5年生
  • 目標: 算数の基礎を学ぶ
  • 内容: 足し算と引き算を教える
  • アクティビティ: 例題を解く

課題点:

  • 具体性に欠け、汎用的な内容のみが生成される。
  • 学年や生徒の特性、授業の目標が明確でないため、結果が曖昧。

熟練者によるプロンプト例

プロンプト内容: 「小学5年生の特別支援学級の算数授業計画を作成してください。授業のテーマは『時計の読み方と時間の計算』です。生徒が視覚的に理解しやすい教材を使用し、具体的な指導手順やアクティビティ例を示してください。また、授業時間は45分とし、目標は時計を読み時間を計算するスキルを身につけることです。」

生成結果:

  • 授業タイトル: 小学5年生 算数「時計の読み方と時間の計算」
  • 学年: 小学5年生
  • 授業時間: 45分
  • 目標: 時計の読み方を理解し、時間の計算ができるようになる。
  • 教材: 時計モデルや視覚的な教材(カード、図表など)
  • 指導手順:
    1. 時計の基礎知識の確認(アナログ時計の構造) (5分)
    2. 時間を読む練習(例題を使用) (10分)
    3. 簡単な時間計算の練習(例: 1時間後や30分前) (10分)
    4. グループ活動: 実際のスケジュールを作成し、時間を計算する (15分)
    5. 振り返りと質問タイム (5分)
  • 評価方法: ワークシートの回答とグループ活動の発表内容を基に理解度を確認

特徴:

  • 具体性が高く、授業目標や時間配分が明確。
  • 特別支援学級の特性を考慮した教材や指導法が含まれている。
  • 生徒の興味や実生活との関連性を重視している。

プロンプトの違いが生む結果

項目初心者のプロンプト熟練者のプロンプト
具体性抽象的具体的
生徒の特性記載なし明記(特別支援学級、小学5年生など)
目標不明確明確(日常生活での活用など)
指導手順記載なし明確な時間配分と指導手順
使用教材記載なし生徒に適した教材の指定

このように、プロンプトを工夫することで生成内容が大きく変わります。より具体的に詳細に入力することで精度の高い文章を生成することができます。
ただし、一般的な調べ物にはこれで十分なんですが、専門的な事柄の生成の場合はRAGを使用していないためハルシネーション(もっともらしい嘘の出力)を起こしやすく、教師がより慎重に生成内容を確認する必要があります。

RAGを活用した生成内容の向上

※RAGとは生成AIの不足知識を補うための仕組みのことで、専門的な知識や情報(学習指導要領など)をデータベース化したもので、これを組み込むことにより生成AIがより精度の高い答えを返してくれるようになります。
RAGを使用しない場合:

  • ハルシネーションや矛盾のある内容が生成されやすく、信頼性が低下する。
  • 例: 学習指導要領に沿わない内容や、特定の生徒の特性に対応していない授業計画が生成される可能性がある。

RAGを使用した場合:

  • 学習指導要領や専門的な教材を取り込み、根拠のある具体的な内容が生成可能。
  • 例: 小学5年生の特別支援学級に適した授業計画として、「時計の読み方と時間の計算」に関する具体的な指導手順や教材提案が含まれる。
  • 生成された情報の正確性が向上し、現場で即時活用可能な内容となる。

RAGを生成AIで使用する方法

  1. 専門データの準備:
    • 学習指導要領、教材、論文、または参考文献など、信頼できるデータソースを用意する。
  2. データベースの構築:
    • DifyやGPTsなどのプラットフォームを活用して、RAGの参照データベースを構築する。
    • データは正確で最新のものを使用し、適切に分類する。
  3. AIモデルの設定:
    • AIモデルにRAGを組み込み、プロンプトを通じて関連データを検索・活用できるよう設定する。
  4. プロンプトの設計:
    • データベースを活用するプロンプトを設計し、明確な質問や要件を含める。
    • 例: 「小学5年生の特別支援学級向けに、学習指導要領に基づいた授業計画を作成してください。」
  5. 結果の検証:
    • 生成された結果を検証し、必要に応じてプロンプトやデータベースを調整する。

コメント

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